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あやかし、もののけ、ホントにいるの?
<~時を駆け抜ける九尾の狐 後半~>

地球・あやかし紀行

前編はこちら。

不思議な現象、幽霊、妖怪、未確認生物をまとめて、親しみやすく“あやかしさん”と呼び、様々な“あやかしさん”情報を紹介しています。

今回の“あやかしさん”は前半に引き続き九尾の狐。東アジアで好き勝手に暴れた九尾の狐はいよいよ日本に上陸!

もちろん、日本でもやらかしてくれます。そして、何千年も生きた九尾の狐は、日本の地で永遠の眠りについたのでしょうか?

 

*玉藻の前 (たまものまえ)

平安時代後期、鳥羽上皇の前に現れた玉藻の前。美貌と博識で上皇の寵姫の座に昇りつめます。まさかこれが、東アジアで紀元前から人や国を滅ぼしてきた九尾の狐だったとは、平安時代の人は知る由もありません。

まずは、所説ある玉藻の前の出自の1つを紹介します。

10代半ばの少女に化けた九尾の狐は遣唐使の船に乗ります。流石の“あやかしさん”とて、海を渡るには船が便利だったのでしょう。

九尾の狐も今回も子どものいない親切な夫婦に取り入り養女として育ちます。幼名は“藻女(みくずめ)”そして美しく成長し18歳でまんまと宮中に仕えます。当時にしたら18歳とは若くピチピチとは言い難いかもしれませんが、その美貌と博識で鳥羽上皇のお気に入りとなり寵姫の座をGET!“玉藻の前”となります、いよいよ長年培った手腕を発揮します。が、今回は若干戦法を変え、人殺しより、上皇を蝕むことに重点を置きます。玉藻の前が現れてから、鳥羽上皇は奇行が目立ち、日に日に身体が弱って、もうヨレヨレ…。加持祈祷も国一番の医者もその原因はわかりません。こんな時、最後の切り札として登場するのは決まって陰陽師。当時の陰陽師は安倍泰成。あの安倍晴明の子孫と言われています。

泰成は一目でその原因がモノノケによるものと見破り、その場で真言を唱えると…ドロン!なんと、玉藻の前の姿が9つの尻尾を持つ狐に変身!玉藻の前だった九尾の狐は宮中を散々逃げ回り、なんとか脱出!行方知れずとなりました。

ここまでが、日本で九尾の狐のやらかしたことなのですが…ここで終わるわけはありません。その後日談も残っています。

葛飾北斎『三国妖狐伝 第一斑足王ごてんのだん』

*九尾の狐の行方

九尾の狐の行き先は、遥か北関東。那須野(現:栃木県那須地方)でした。

ここで九尾の狐は小休止?女や子どもを攫い奇妙な事件が多発します。正気に戻った鳥羽上皇はそれを知り、九尾の狐討伐隊を那須野へ向かわせます。討伐隊は苦難の末に九尾の狐を追い詰め九尾の狐を仕留める事ができました。

九尾の狐の亡骸は巨大な毒石「殺生石」となり、恐ろしい毒の気で近くを通る人や動物を殺害!なんてシブトイのでしょう!多くの僧がこの呪いの殺戮を止めようと頑張ったのですが…まったく歯が立ちません。そんな時、曹洞宗の僧である玄翁和尚の登場!この和尚はタダの坊主でありません、かなりの高僧。皆が諦め、長年放置された殺生石の前で一心不乱に経を唱えると…殺生石はピカッ!と光って3つに砕け散ったというのです。

その欠けた一片が今もそのまま栃木県那須町に残り祀られています。

もちろん見学もできますが、殺生石に触れることはできません。毎年5月殺生石を囲んでお祭りも行われています。神社から殺生石までを白装束に松明を持って行列し白面九尾狐太鼓という伝統芸能も披露されます。また申し込めば先着で狐の面をつけ行列に参加することも可能とか…

 

ところで、本当に九尾の狐は消えたのでしょうか?

前半でも紹介しましたが、その昔、何度倒されても中国やインド、韓国などで数百年に1度現れては、美しい女に化け世を乱した恐ろしい“あやかしさん”です。日本に上陸し退治され那須の地で大人しく眠っているのでしょうか?最後の被害者の鳥羽上皇が崩御したのは1156年、まだ1000年も経っていません!油断はできません。

もしかすると再び現れチャンスを狙っているかもしれません。美人には要注意です!

狐や人を化かすといいますが…日本古来の伝説では狐は五穀豊穣の神の化身、神の遣いとされています。狐といえば油揚げ。大豆から作られた油揚げに米を詰めたご馳走を豊作の感謝として神の遣いに供えたため、この食べ物も、狐を祀る神社にも共にお稲荷さんという名前になったとか…

九尾の狐も狐が人を誑かすという言い伝えも、仏教と一緒に大陸から海を渡って日本にやってきたのでしょう。

 

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放送作家 キャスティングプロデューサー
南鰻衣ルカ

本業はTV番組・イベントなどキャスティングP

音楽業界、芸能界、TV・ラジオ・イベント業界などを経て、現在に至る。

仕事の中で知り合った多くの人から不思議な話をたくさん聞き、不思議な事に

巡り合ううちに“不思議なモノ”や“目に見えぬものが”大好物に!

それらを伝えていこうと執筆している。

得意ジャンルは神話、伝承、歴史、天文、色彩、スピリチュアル、どうでもいい雑学。

趣味はイラストレーション、読書。

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