大神ゼウス君の世界神話教室
女神のコトならワシに聞け！　第5話

世界各地の神々の物語“神話”。違う時代、遠い異国の文化であるにも関わらず、何故かよく似たストーリー、よく似た教訓を残しているものも多くあります。神様は意外と人間臭い。特に女神は感情豊かでわかりやすい。世界中の神話から女神１柱をPICK UP！

ナビゲーターはギリシャ神話の神の長にして、女性には百戦錬磨の大神ゼウス！自由奔放な女神の物語から神話の世界を覗いてみましょう。。

 

最初にクイズです！

Q１「イヌイット神話で海の女神セドナが人生で最も恨んだのは？」

a.犬　　b.父親　　c.カモメ　　…答えはこのゼウス君の神話教室にあるよ！

ゼウス：おハロー！ゼウス先生だよ～ん。

今回はイヌイット神話から創生と冥界、そして海の女神セドナを紹介しよう。

イヌイット（エスキモー）は、グリーンランドやカナダ北部などの地球上で最も寒冷地帯に太古から生活していた民族だ。ここにも独特な神話があり、神がいる。

イヌイット神話で人間が誕生する前、この地には巨人族が住んでいたとされている。ギリシャ神話でも巨人族が、日本の伝説にもダイダラボッチという巨人がこの地を造ったというが…ま、その話はまたにして、セドナも巨人族の娘だった。

父親と２人暮らしのセドナは働き者で器量よし。求婚者も多くいたが「私、絶対に結婚しない！」と頑なだった。あまりに強情だから父親は罰として飼っていた犬と彼女を結婚させてしまう。しかも、ご飯も与えないので夫の犬がせっせと飯を調達していた。

…いつしか、セドナは犬との間に何人も子どもを産んだ。

ある時、超イケメンが寄ってきて「ご馳走と素敵な服、暖か～い毛布もあげるよ、おいで」と言われヒョコヒョコついて行っちゃう。そりゃそうだよね、恋愛に免疫はないし、旦那は犬だもん。

だが、実はこのイケメン、カモメの化身だった。父親はカモメ館へ忍び込みセドナを連れて逃げだしたんだが、すぐにバレた！カモメが追って来る。父親は超高速で舟を漕ぎ沖まで逃げ切ったが…そこに突然の大嵐！カモメの逆襲だ、魔力で嵐を起こしている！このままでは自分が危ないと思った父親は…

「おい、セドナ！カモメんとこ、帰れ」

「んな、バカな！父さん私を助けに来たんでしょ？」と猛烈な父娘喧嘩になり、乱闘の末、海に突き落されたセドナは舟の縁にしがみ付いた。父親はセドナの指を斧で切り舟から離し、トドメに左目を櫂でガシッ！…セドナは冷たい海の底へ沈んで行った。

なんとか家に戻った父親は犬に「セドナどうした？どこ行った？」と毎日追い回され、ウザくなり犬を殺し海へ放り投げたんだ。

一方、暗い海に沈んだセドナは父親の仕打ちに死んでも死にきれない。怨念で蘇り、海底でクジラの骨で館を作り、海を操り海の生物を統括する力を養っていた。そこに、犬！犬の旦那が沈んできた。「いいね！使えそう」と番犬に採用。

暫くノホホンと暮らしていた父親は、セドナの復讐か？突然嵐に巻き込まれ、海にドボン！海に沈んでいった。

「よく来たな、オヤジ」神となったセドナは父親の魂を取っ捕まえ、永遠に監禁したのだ。

セドナは自身の経験から裏切りや虐待など不道徳を許さなかった。海とこの世の生き物を常に監視し、海で人が死ぬと犬に館まで連れてこさせ、その者の人生を厳しく審判をする“冥土の女王”となった。そう、セドナの館＝冥界というわけ。

神に転生しても癒えることない心の傷。セドナが過去を思い出し怒りと悲しみに暮れる時、海は荒れ狂う。

人々は嵐や不漁が続くとセドナに祈り、シャーマンが幽体離脱しセドナの元へご機嫌取りに行くという。セドナが一番喜ぶのは自分では出来ない髪の手入れをしてやること。幾つになっても、そこは女の子だね。

後に、セドナの子ども達は船で各地へと旅立ち人間の祖先となり、父親に斧で切られたセドナの指はアザラシなど海獣になった。

イヌイットにとってアザラシやセイウチ、クジラなどは食料であり、脂も毛皮も生活必需品。人間の命の糧を創造したセドナはやっぱり母なる女神だね～

しかし、ひっで～な、セドナの親父。犬に娘を？ないわ～！パワハラ、モラハラ、さらには動物虐待！とんだDVオヤジだ！ワシが天罰を！あ、もう死んでるか…

ワシはどんなバカ娘でも犬とは結婚させないし～。イケメンに化けて娘を攫うカモメも許せん！あっ、そこはワシにも多少身に覚えが…ワシにはカモメは責められまい。…神話にはそーゆ―事もあるってことよ。

女神となったセドナの姿？人魚のように魚の尻尾を持った巨大なお婆ちゃんさ。海で「昔は可愛かったんだけどね～」なんて言っちゃダメだぞ、セドナは地獄耳。聞きつけたら大嵐が起こるぞ。

というわけで、冒頭のクイズの答えは「b.父親」でした。