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「帝釈天などが住む世界の中心の山」を
由来とする日本の山はどこ?

須弥山まずは、古代インドの世界の中心の山とされるものは、小説やゲームでもしばしば目にする「須弥山」である。

しかし、これは古代インドの世界観に由来するもので、仏教に限らず、ヒンドゥー教やバラモン教にも共有されている。そして、この世界観は仏教やヒンドゥー教とともにアジア世界へ広がったため、インドネシアのジャワ島にはスメル山という、これに由来する名を持つ山が存在する。

 

須弥山や古代インドの世界観の具体的な内容は仏典でいうと、阿弥陀仏信仰を唱えたことでも知られる世親(ヴァスバンドゥ)による『倶舎論(アビダルマコーシャや阿毘達磨倶舎論ともいう)』の前半部分に描かれているものなどが有名だ。

その記述によると、須弥山の高さは八万由旬(八万四千の場合も)、これは海面からの高さで、海底から海面までさらに同じ高さがあるという。

そして、山の頂上も一辺が八万由旬の正方形となっており、そこには宮殿などがあり、帝釈天を中心とした、四天王など三十三の神が住むという。

頂上の形状からわかる通り、上にいくほど細くなる通常の山とは異なり柱状で、東が銀、西が水晶、南が瑠璃、北が金で出来ているとされる。

由旬とは長さの単位で、約7kmとされる。海面から出ている分だけで約56万kmというとてつもない高峰となる。

なお、前回の記事で少し触れた「白毫」だが、浄土三部経のひとつに数えられる『観無量寿経』の一節には「眉間白毫 右旋婉転 如五須弥山」とあるが、伸ばすと300万km近くになる計算だ。

ここまででも巨大な数の単位が登場していたが、実はこれは序の口。この須弥山や周囲の山・海・世界の下には金輪・水輪・風輪という順で3つの輪があり、大地を支えているという。この中の金輪はもっとも薄いが、それでも約224万km、最下層の風輪にいたっては約1120万kmである。余談だが「金輪際」という言葉はこの金輪の際、つまり物事の極限ということからきたものという。

周囲を取り囲む山や海などの話もあるのだが、本題から大きく逸れ出すので、構成についてはここで一段落とさせていただく。

 

このようなエベレストも真っ青な高峰・須弥山は古代インドの呼称「スメール」を音訳したものである。しかし、日本には須弥山やスメール山という山は存在しない。

それでは何が日本の山に関係があるかというと、『西遊記』でも知られる三蔵法師こと玄奘は、須弥山を「妙高山(世界の中心の山)」と漢訳したという。

ここまで来れば明確だろう、越後富士の異名でも知られる、新潟県妙高市の妙高山が、これに由来する山である。

この山を妙高山という記録が見られるのは室町時代頃といわれるが、それ以前から妙高山および周囲の山は霊山とされており、修行道場だったといわれる。やがて、その修行者らが須弥山に見立て、妙高山の名で呼ぶようになったと考えられている。

 

現代の妙高山はスキーなどのリゾートの場としても有名だが、毎年7月に行われる、1200以上の伝統を誇る関山神社の火祭りなど、山岳信仰の息吹を残す行事も残っている。一度、霊場としての妙高山を訪れてみるのはいかがだろうか。

 

 

浄土宗 願生寺 住職/有限会社 セブンワンダーズ所属 クイズクリエーター
遠藤和成

学習院大学文学部史学科卒

大正大学大学院仏教学研究科浄土学専攻修士課程修了

高校・大学は剣道部、前職は中学・高校の社会科教員。クイズ作家としてはクイズ研究会やサークル所属経験のない異色の経歴。クイズ番組は好きだったが、プレイヤーとしての経験はアーケードゲームのみ。

僧侶としても、仏教系大学に大学院のみ在籍という極少数派。

有限会社セブンワンダーズ入社後は僧侶とクイズ作家の兼業で活動。法話にもクイズ作成で得た知識や要素を取り入れ、独自性のあるものを展開しているほか、寺院での「仏教クイズ」も企画している。

好きなジャンルは仏教、世界史、サッカー。

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