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蹴鞠の達人が持つ伝説とは?

平安時代の遊び「蹴鞠」(けまり)をご存じでしょうか。

全国各地の神社で行われたというニュースをときどき見かけますね。

 

まずは蹴鞠のルールを大まかに説明します。

 

約10m×10mの正方形の土地をコートとして準備し、その中で4~8人程度のプレイヤーがボールを落とさずに蹴り続けるゲームです。

現代だと、バレーボールの円陣パスをリフティングでするようなものでしょうか。個人の勝敗というよりも、回数を長く続けることをメインとした遊びでした。

 

「詩歌・管弦の遊び」と平安時代の遊びはなんともインドアですが、時代が下るにつれ、外での遊びも増えてきたようです。かの清少納言も、蹴鞠に対して「優雅ではないけれど、おもしろいわ」と言っています。

 

平安時代の終わり頃、蹴鞠を極めたいわば「達人」がいました。藤原成通(1097~1162?)という人物です。

 

伝説の人物になるまでにかなり過酷な修行を積んでいたことがわかるエピソードが『古今著聞集』『成通卿口伝日記』に収められています。

 

蹴鞠のコートに立つこと7000日。

そのうち、欠かさずに連続で立ち続けたのが2000日。

雨の日も風の日も修行を続け、そして体調を崩した日でさえも、鞠に足を当てたまま横になるという有様でした。(これで上達するのかは不明ですが)

その成果あってか「蹴聖」と呼ばれる成通の蹴鞠達人伝説には事欠きません。

 

①清水寺の高欄往復事件

清水の舞台の高欄(飛び降りる前に越えなければならない柵・手すりのようなもの)を綱渡りの要領で、鞠を蹴りながら端から端まで一往復して見せました。

「清水の舞台から飛び降りる」という言葉もあるくらいです。本人は平気でも、こういうのは見ている方が、心が休まらないというもの。一緒に清水参りに来ていた父は一言「頭がおかしい」と言い放ち、お参り途中で追い返され、さらに1か月ほど家に入れてもらえなかったそうです。

 

②蹴鞠の妖精に出会う事件

修行を1000日続けた時に、成通はお礼参りをしています。

その際、顔は人間・手足は猿・3.4歳くらい子供のような謎の生命体(?)が三体出てきて、

「私たちは鞠の妖精だよ!こんなに鞠を好きになってくれる人なんて初めてだわ!いっぱいお供えものしてくれてありがとう!蹴鞠をやっていると、集中して雑念が消えるから、蹴鞠が流行る世の中ならきっと平和だわ!これからも見守っているから頑張ってね!」(超意訳)

と言って消えて行ったそうです。

蹴鞠の妖精に出会えたのはやはり達人だからなのでしょうか。

それとも他には出会えるほどのめりこんだ人がいないからなのでしょうか…。

菊池容斎 (武保) – 前賢故実 巻第6より

③鞠が消える事件

長い回数続けるために、次の人が蹴りやすいよう「高く蹴り上げる」ことが重要視されていました。成通はさすが「達人」、蹴り上げる高さが他の人の3倍あったようです。(逆に次の人が蹴りにくいのでは…と思ってしまいます。)

あるとき、鞠を高く蹴り上げたらちょうどつむじ風が起こり、鞠を吹き上げ、空に上がって雲の中に入って、見えなくなってそのままになってしまったそうです。

正直「ほんまかいな」レベルの事件ですが、このエピソードと一緒に「神仏に誓って本当です」とも書かれています。

さらに、成通は、蹴鞠一筋かと思いきや和歌・楽器・乗馬などいろいろな分野に秀でている「デキるやつ」だったようです。

 

なんであれ、何かに熱中できるのは素敵…ですね。

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一介の予備校国語講師
ことのは

大阪府出身・在住。
同志社大学文学部国文学科卒業。
現在は予備校で(比較的)新人講師として勤務。
担当ジャンルは【古典文学】

授業では、本編よりも脱線話の方がウケて悲しい反面、過去の自分もそうだったので生徒を責められません。小ネタを収集する日々です。

基本どんなジャンルでも興味あり!
でも、結局言葉(=ことのは)のもつ魅力から逃れられずここまで来てしまいました。
尊敬する人は中2のときからロザンの宇治原さん。好きなことは、得意ジャンルが全く違う同居人とクイズ番組を見ながらやいやい言うこと。

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