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あやかし、もののけ、ホントにいるの?
~唐傘!超有名だけど。その実態は?~

地球・あやかし紀行

不思議な現象、幽霊、妖怪、未確認生物をまとめて、親しみやすく“あやかしさん”と呼び、様々な“あやかしさん”情報を紹介しています。

今回の“あやかしさん”は日本ではどんな世代にも親しまれる定番の妖怪「唐傘」を紹介します

歌川芳員『百種怪談妖物双六』

妖怪「唐傘」は昔ながらのお化け屋敷でも起用される定番のオバケキャラ。

「唐傘」は昔の書物にその姿は描かれてはいるのですが、今まで紹介した多くの妖怪のように伝承や出現の理由がほとんど残されてはいないため、伝承を元に描かれたというよりも、絵が先行した後に妖怪と認知されたのではないかと思われます。江戸時代のモノノケ絵画や妖怪カルタの絵によって広まり、いつのまにやら有名になってしまいました。

「傘おばけ」「からかさ小僧」「唐傘一本足」などとも呼ばれ、一つ目で一本足、傘を突き破るように2本の腕が伸び、口からは長い舌を伸ばしているイメージが定着しています。一本の足で飛び跳ねて移動します。稀に2本でも描かれていますが、傘の柄は一本が定番ですので、おそらく2本足は創作です。

こんなに有名であるにも関わらず、さしてコワイ伝承もなく、多くが可愛らしい姿で描かれるため怖がる子どもも少なく、却って喜ばれ遊ばれてしまう事も…。子供の頃、雨の日に傘を差しながら、半分傘を閉じて片足立ちをして「傘オバケ~」とやった人もいるのではないでしょうか?

漫画やアニメの「ゲゲゲの鬼太郎」では、空中で体を猛回転し電動ノコギリのようになったり、自身をフル回転させ催眠術、目から光線を出して敵を攻撃する妖怪。本来の「傘」という用途は薄く、かなり技持ちでボロ傘の割に意外と強い。もしも、存在するのであれば、防犯にもDIIYにも手品にも使い勝手抜群!かなりのスグレモノ。TVショッピングで紹介すれば大好評間違いなし!万能包丁や高枝切り鋏と並ぶヒット商品となることでしょう。

しかし、それは後付けのフィクション。実際には伝承も利用法もない唐傘のような人々の生活用品が妖怪と化したものを「付喪神(つくもがみ)」といいます。

誰かが愛用したもの、捨てたモノ忘れられたモノが歳月を経て、いつしか精霊が宿り意志を持ち動きだし“あやかし”化していくのです。

唐傘以外にも、草履には「化け草履」、鏡には「雲外鏡(うんがいきょう)」、祭事や儀式に使われた鈴には「鈴彦姫」、また瀬戸地方では特産品の瀬戸物(陶器)に憑いた「瀬戸大将」など、これらも皆「付喪神」と言われています。

 

日本には「器物は百年経つと化ける」と言う伝承があり、古く使い込まれたモノは99年を目処にリニューアルする事が多く「あと一年だったのに!」とモノが恨んで妖怪になると思われていたのです。モノは100年で格が上がり逸品となるのでしょう。

 

付喪神(つくもがみ)は「九十九(つくも)神」とも表記されます。

“九十九”には「長い(九十九年)年月や経験」「万物(多様多種))」という意味があります。私たちの時間もモノも99どころではなく無数ですが、昔の人にとって無数を現す際に九十九を用いたのでしょう。日本に伝わる八百万の神、という言い方も同様で、果てしない時間や数は想像がつかない程の大きな数字で表現したのです。

現在も針供養、箸供養、財布供養など愛用した日用品を処分する際は神社やお寺で供養するという風習が残っています。

これは、付喪神への畏怖、そして八百万信仰が今も根付いているからです。そして「モノは大切に使いましょう」という教えなのでしょう。

狩野宴信『百鬼夜行図巻』

詳しい伝承も不明であまり怖くはないけれど「唐傘」は妖怪界の日本代表です。

その姿は奇妙ですが、単純なフォルムで誰にでも簡単に描けて親しみやすいチョイカワの人気者。ゆるキャラの大先輩です。

雨の多い日本の風土で傘は人々を雨から護り愛用され、いつか朽ちて捨てられ忘れられる事により生まれた寂しい“あやかし”さん。「大切に使ってよ~」と訴えているのかもしれません。

忘れてきたはずの傘がある日玄関に戻っていたら…それはアナタの傘が「唐傘」となって、片足でピョンビョンとモノスゴイ勢いで跳ねながら、人知れず戻ってきたのでしょう。どうか末長く大切に使ってあげて下さい。

 

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放送作家 キャスティングプロデューサー
南鰻衣ルカ

本業はTV番組・イベントなどキャスティングP

音楽業界、芸能界、TV・ラジオ・イベント業界などを経て、現在に至る。

仕事の中で知り合った多くの人から不思議な話をたくさん聞き、不思議な事に

巡り合ううちに“不思議なモノ”や“目に見えぬものが”大好物に!

それらを伝えていこうと執筆している。

得意ジャンルは神話、伝承、歴史、天文、色彩、スピリチュアル、どうでもいい雑学。

趣味はイラストレーション、読書。

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