星空散歩～夜空の地図と星々の記憶～
vol.04【おとめ座】

遥か古の時代から世界各地の人々が夜空を見上げ無数に輝く星々を神や英雄、伝説の妖獣、動物などに見立てそれぞれの物語を紡いでいました。

現在は世界共通の88の星座が制定され宇宙の地図を作っています。

星座にも星々にも物語があります。星の物語をお話ししましょう。

☆乙女座☆

＜乙女座はどこにある？＞

乙女座は4～５月頃、南東の空に昇っています。乙女座は全天で2番目に大きな領域を持つ星座です。もしも実際の空に星座図が投影されたとしたら…地平から実に巨大な女が夜空に寝転んだ姿で現れます。

乙女座には小さな星がたくさんあり、すべてを繋ぎ合わせるのはなかなか難しいですが乙女座のシンボル１等星のスピカは誰にでも見つけられるはずです。

探し方は、北斗七星の柄杓の柄の先から曲線を描くように辿ると大きくオレンジ色に輝く牛飼い座のアークトゥルスがあり、そのまま曲線を描いた先の白く大きな星がスピカです。スピカは乙女が左手に持つ麦の穂の部分に当たります。

＜大いなる母の物語＞

乙女座のモデルは大地（豊穣）の女神デーメーテール、その娘のペルセポネ、正義の女神アストレアなど所説ありますが、ここでは最も有名なデーメーテールをご紹介します。

大地と豊穣の女神デーメーテール。彼女の加護を受け大地は豊かな実りをもたらし神や人々の繁栄を導きます。

普段は温厚で優しい女神ですが怒らせたらとても厄介。飢餓や飢饉を起こし報復します。たとえば、デーメーテールの聖地を荒らした者には、いくら食べても満たされない“永遠の飢餓”に陥れじわじわと死に至らしめた恐ろしい女神です。そのため怒りの女神・エリーニュスという異名まであります。

デーメーテールの神話で最も有名なものは四季の起源に纏わる物語です。

デーメーテールは冥界王ハデスに誘拐された愛娘コレー（冥界での名はペルセポネ）探しに必死になり女神の仕事を全て放り出したため、加護を失った大地は枯れ人々は飢餓に苦しみ、神々の生活にも大きな影響を及ぼします。ゼウスの協力でハデスからコレーを奪還しますが、喜びもつかの間コレーはハデスの策略で冥界のザクロを1/4程食べてしまっていたのです。冥界の物を食べたら二度と地上には戻れません。ゼウスは再びハデスと協議し、苦肉の策で１年を４等分し、コレーにその1/4を冥界で過ごすように命じます。デーメーテールは娘が冥界で暮らす期間は洞窟に籠ってしまうため、大地に加護が届かず作物が育たない「冬」が訪れる、というお話です。

デーメーテールはゼウスとの間のコレー、海神ポセイドンとの間に娘デスポイナとアリーオン（馬！）。そして、恋人イーアシオンとの間にもプルートスとピロメーロスと二男二女一獣、５児の母です。

２人の弟ゼウスとポセイドンには無理矢理に迫られ、最愛のイーアシオンはゼウスの嫉妬で殺され、兄ハデスには愛娘を奪われる…身勝手なお騒がせ３兄弟に常に翻弄される、なんとも気の毒なな身の上です。

とはいえ、我が子は我が子。子どもには深い愛情を注ぐ強く勇敢な“母”である事が神話からうかがえます。

デーメーテールの“デー”とは、大地を意味するガイアのガーが変化したという説が有力で“メーテール”は古代ギリシャ語で“母”であるため、その名の意味は“大地の女神”です。“大地の女神”は神々の始祖ガイアからレアーへ、そしてデーメーテールへと代々母から娘へと継承され女神の中でも最高位の「大女神」とも呼ばれます。

大女神だからこそ、全天で２番目に大きな星座なのかもしれません。

星占いでは8月23日〜9月22日生まれが乙女座です。

乙女座の人は正義感が強く几帳面。母性が強く家族のためなら全力て尽力するといいます。一方、非常にナイーブで傷つきやすい一面も。きっとデーメーテールの性格も反映されているのかもしれません。